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『下流は太る こんな暮らしがデブの素』 三浦展編著
『下流は太る こんな暮らしがデブの素』 三浦展編著
http://www.ohmynews.co.jp/news/20080324/22524
「国はわかっていないんです。あの子たちの肥満の原因が貧困だということを」
ジャーナリストの堤未果氏が著した『ルポ 貧困大国アメリカ』(岩波新書)の第1章、「貧困が生み出す肥満国民」の中で、ニューヨーク州ブロンクスにある公立小学校の教師、エミリー•ジョンソンさんがこう語っている。
「家が貧しいと、毎日の食事が安くて調理の簡単なジャンクフードやファーストフード、揚げもの中心になるんです。多くの生徒は家が食料配給切符(貧困ライン以下の家庭に配給される食料交換クーポン、フードスタンプ)に頼っていますから、この傾向はますます強くなりますね」
貧困家庭ほど、食事がジャンクになり、それが体型や健康状態に影響する。これはアメリカの子どもだけに限った話ではない。
下流が太る日本の現実
『下流社会』(光文社新書)の著者で、マーケティングアナリストの三浦展氏は近著、『下流は太る! こんな暮らしがデブの素』(編著、扶桑社)の中で、日本における「下流」たち=「意欲が低い」人たちについて、こう指摘している。
「日本もまた成人女性を除く国民全体が太りつつある。その背景には、日本人全体の生活がアメリカ化してしまったことにあるのでしょう」(26ページ)
アメリカ化の基礎はクルマである。道路網が発達する。大規模ショッピングセンターができる。ファミリーレストランや、ファストフード店が立ち並ぶ。それらの店で食事をする光景が日本でも今やごく普通になってきた。三浦氏は、これら「ファスト化」が食生活の均質化を招いたという。
「ファスト化」の進行は、雇用にも影響を及ぼす。地元企業がつぶれ、大資本の店で雇用される。正社員ではなく、パートやアルバイトが増加する。より高収入を求め、割増賃金のある早朝や深夜、休日に働く。その結果、家族の生活はバラバラになる。そうなると、
「母親が仕事から帰って食事を作るのが面倒くさいとか、夕食時に母親がいないという理由で、冷凍食品や外食に頼るようになる。カロリーの高い食事になるわけです」(31ページ)
「年収について教えてください」の回答(30〜34歳男性)との相関。年収が低いほど太っている傾向がある(同書39ページ。ソースは、カルチャースタディーズ研究所+イー•ファルコン「男性仕事•生活調査1次調査」2006より)
貧困だけでなく、学力と肥満についても、同書は関連性を指摘する。三浦氏が設立した「カルチャースタディーズ研究所」の調査結果からは、こんなことが読み取れる。
「学校の成績が5段階で『上』から『中の中』の子どもで『肥満気味』なのは、6%前後なのに対し、成績が『下』の子どもで『肥満気味』の子どもは17%もいるんです。…(中略)…大人の男性でも、年収や学歴が低いと肥満が多い傾向にありますし、テレビを見たりパソコンをする時間が長い人ほど太っている傾向もある。…(中略)…15~22歳の男子で、テレビを見る時間が1時間未満だと肥満率は9.6%、4時間以上だと20.8%だった」(32-35ページ)
学力と肥満、テレビ視聴時間と肥満には関連性があるらしいのだ。
「成績別 肥満気味の割合」。成績の悪い子どもは肥満が多い(同書33ページ。ソースは、カルチャースタディーズ研究所+宝島社「母親調査」2006)
ポイントをチェックしてみよう
「第2章 こんな暮らしがデブの素」では、太っている下流の人たちの生活をルポしている。
「勤務先でのファミレスで1日3食」「独り暮らし&面倒くさがり」という「ファスト系」や、「不規則な生活と面倒くさがり」「野菜の代わりにサプリメント」という「都市型肥満系」、「ひきこもり生活で15kg増」「パラサイト生活に甘えている」という「パラサイト系」、「少年時代からファストフード三昧」「憧れだった沖縄への移住生活」という「沖縄系」といった具合に、様々な生活パターンの人たちの1日について分析している。
そして、[下流は太る]チェックポイント、も以下のように提示している。
1) 年収(万円)が年齢の10倍未満だ
2) 面倒くさがり、出不精だ
3) 未婚だ
4) 食事はひとりでとることが多い
5) 自炊せず、外食が中心だ
6) 片手で食べられるものを好む
7) 食事の時間、回数が不規則だ
8) 生ものを食べていない
9) 移動は車やバイクが多い
10) セックスパートナーがいない
あなたもチェックしてはいかがだろうか。同書に登場するそれぞれのケースについて、健康管理士や栄養士らがこんなアドバイスをしている。
「『仕事が肉体労働だからスポーツをする必要はない』と考えないで、心身ともにリラックスできる、そして生活の中で無理なく実践できる程度の運動を始めてみませんか」(「勤務先でのファミレスで1日3食」の人に対して)
「1日に摂取するするカロリーも非常に高い。すぐに減らすのは難しいと思うので、食後のデザートをやめる、間食のカップ麺をやめてみる、もしくは余分にかかったマヨネーズをかけないだけでもだいぶ違います」(「不規則な生活と面倒くさがり」の人に対して)
「空腹時間が長くなると、体は危機感を覚えます。そしてこの先の飢餓時に備えて体内に栄養を蓄えるべく、次に入ってきた栄養素の消化吸収率がアップします。その流れがさらに太りやすい体を作ってしまうんです」(「ひきこもり生活で15kg増」の人に対して)
ダイエットは太る!
「第4章」では、最大110キロから73キロへのダイエットに成功した、フリーライターの下関マグロさんとの対談が掲載されている。その最後のあたりで、「ダイエットをすると太る」といった内容がある。
──最後に、下流に向けたダイエットアドバイスをお願いします。
下関 ダイエットをしないほうがいい。すると太るよ(笑)。
三浦 というと?
下関 僕はね、80キロになったときに「まずいな」と思ってちょっとダイエットしたんですよ。でね、70キロくらいまでは落ちるんです。すると、体って不思議なもので、「お前は、80キロの体なんだ」と主張してくるんですね(笑)。で、気づいたらダイエットする前よりひどい85キロになってしまう。どうやら体って、そういうシステムになっているらしい。
私もダイエットをしたことがある。半年で13キロ減だった。しかし、ダイエットをやめると、3カ月で元の体重に戻ってしまった。そのとき、私はダイエットをする「理由」が存在したが、その「理由」がなくなると、生活全体がもとに戻ってしまった。では、ダイエットをする理由はどんなものがいいのか。
下関 それはね、健康診断に行くしかない。下流の場合、行けば必ず問題が見つかるから。
三浦 もしかしたら、ほとんどの人が糖尿病かその予備軍かもね。
(中略)
下関 意欲がない下流たちだって、「死ぬ」とか「インポになる」とか「失明する」って脅されたら、さすがに痩せる気になると思うんだよね。
三浦 今のはいいメッセージですね。
やはり、ダイエットは、方法よりもまず「理由」を作ることが第1歩ではないかと、私自身も感じている。しかも、生活全般を見直さなければならない「理由」と出会えるか。そして、それが一時的なものではなないことが大切だ。ダイエットはそれがキーポイントではないか、と思える。
食生活は自分らしく
同書のあとがきには、「脱肥満は階級闘争だ!」という強烈なタイトルが付けられている。
思うに今日、正しい食生活をして肥満から解放されることは、単にスタイルがよくなるという意味を持つだけではない。それは大げさにいえば階級闘争なのだ。(203ページ)。
便利さに負けて素材と道具を奪われた人間は、実は搾取されているのである。しかし意欲がなくても腹一杯食えて太れるファストフード的下流社会にどっぷりつかった人間は、搾取されているという実感を持たぬまま、ついつい便利で安直な生活を選択してしまう。(204ページ)
つまり便利さ、安直さの中で、規則正しい生活を奪われ、コンビニ化、ファストフード化した生活をしてしまうことで、面倒くさがりでも甘えていても、生活をしてしまえる現実がそこにはある。その現実から打破するには、まさしく、
流れてくる餌を食べるだけでなく、せめて自分で食べるものくらいは料理したい(205ページ)
さあ、今日から、「下流」を抜け出して、生活を見直そう。
扶桑社
1300円(税別)
2008年3月
単行本ソフトカバー
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