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【法廷から】「生まれてこなければよかった」 被告の涙
【法廷から】「生まれてこなければよかった」 被告の涙
http://sankei.jp.msn.com/affairs/trial/080320/trl0803201058003-n1.htm
恵まれない環境に育ったからと言って、犯罪が正当化されるわけではない。そうわかってはいても、被告の境遇に同情を禁じ得ないときがある。
18日、東京地裁の初公判。女性の顔面を殴るなどして手提げバッグを奪ったとして、強盗致傷の罪に問われた男性被告(35)もその1人だった。
起訴状によると、被告は今年1月8日、東京都足立区の路上を歩いていた女性=当時(50)=を路上に押し倒し、ガードパイプに女性の後頭部をたたきつけるなどした上で、現金約6万5000円やキャッシュカードなどが入った手提げバックを奪った。女性の頭部などに全治10日のケガを負わせた。罪状認否で被告は起訴事実を認めた。
被告は、郷里の家族とは音信不通の状態だったという。
弁護人「家族は父母と兄、妹がいる?」
被告「母は中学3年のときに死にました」
弁護人「父親とは18年間、会っていない?」
被告「はい」
父親との折り合いが悪かった被告は、中学校を卒業すると、東京の寿司屋で働き始めた。それ以降、職を転々としながら働き続けた。犯行前に勤務していたのは警備会社だった。
弁護人「12月28日にもらった給料はどうした?」
被告「その日は家賃と弁護士費用を払った」
弁護人「いくらですか?」
被告「家賃は3万8000円、任意整理の弁護士費用が1万5000円」
被告はその後、パチスロでさらに2、3万円を浪費した。次の勤務日、被告は出社しなかった。
被告は消費者金融に約210万円の借金があったほか、上司にも2、3万円の借金があった。
弁護人「なぜ(上司への)2、3万円の借金で行くのをやめた?」
被告「何度も怒られて、注意されて、もう無理かなと思って」
年末年始はゲームセンターでのゲームや、パチスロをして過ごした。自宅に帰るのも面倒だったので、新宿の漫画喫茶に寝泊まりした。
弁護人「そのうち金がなくなるのは目に見えている。どんなことを考えていたの?」
被告「どうなってもいいや」
弁護人「どうなると思った?」
被告「死ぬか、犯罪を起こすか」
なぜ被告は犯罪の引き金を引いたのだろうか。
弁護人「なぜ決意した?」
被告「おなかがすいたし、自殺する勇気がない」
弁護人「頭を下げて仕事に戻るという選択肢は?」
被告「その時点ではどうなってもいいやと」
被告は犯行を「後悔している」と述べ、弁護人からの問いに泣きじゃくった。
弁護人「時計の針を戻せたら、どこでどうすればよかった?」
被告「生まれてこなければよかった。どこでって、生まれたこと自体がもう…」
検察側の求刑は懲役7年だった。客観的な犯行事実を見れば、「金がほしい」という犯行の動機は短絡的で、ガードパイプに頭部をたたきつけるという犯行の態様も危険極まりなく、求刑が重いのも理解できる。金がなくなった経緯も自業自得だ。だが、心の中でそう単純に切り捨てられなかった。
中学校を卒業したらすぐ故郷を離れて上京し、家族の愛情も知らず、ただ働いて生きていくだけだった被告の「生まれてこなければよかった」という言葉が心に引っかかった。罪滅ぼしが済んだ後は、これからの人生で「生まれてきてよかった」と思える瞬間を自分の力で見いだしてほしい。
判決は3月28日に言い渡される。(末崎光喜)
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