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ラブホテルから見える日本人の性

ラブホテルから見える日本人の性

http://www.ohmynews.co.jp/news/20080411/23358?cd

第1回 「ラブホテルは朝から満員」

金 益見(キム・イッキョン)(2008-04-11 21:00)  2008年2月20日に『ラブホテル進化論』(文春新書)という本を出版した。

 帯に「現役女子大学院生」という、一見女子大生に間違えてしまいそうな言葉がどーんとあり、何回見ても恥ずかしい。確かに私は、ラブホテルを研究している学生には間違いないのだが、やっぱりちょっと恥ずかしい。

 そもそも私はラブホテルに馴染みがなかった。馴染みがなかったというより、あまりいい印象を持っていなかった。ラブホテルには殺人事件や不倫、ヤンキーが行くところだというイメージがあった。

 今時ラブホテル=ヤンキーが行くところだと思っている若者はほとんどいないと思うが、私はヤンキーが天下をとっていた中学校に通っていたので、生まれて初めてラブホテルという言葉を耳にしたのは、ヤンキー情報からだったのだ(「誰々が妊娠したからカンパして!」みたいな……)。

 そんな私が、なぜラブホテルを研究することになったのか。それは世代間の羞恥心の違いに興味を持ったことがきっかけなのだが、その辺りは本の中に書いてあるので割愛する(知りたい方は『ラブホテル進化論』の「はじめに~」をご覧ください!)。

 そうして、研究が始まったのだが、本を出すまでの道のりは長かった。参考文献がほとんど存在しないラブホテルに関しては、足を使って調査するしかなかったからである。

 まず「行かないと話にならない!」ということで、私は初めてラブホテルを訪れた。大学4回生の時である。

 ゼミでの研究発表を控えていた私は、フィールドワークをモットーとする教授の指導で、恐る恐るひとりでラブホテルに足を踏み入れた。

ラブホテルの待ち合い室にて…(イラスト:金益見)

すると、目の前に広がっていた光景は、カップルの行列であった。

 私は思わず凝視してしまった。部屋が空くのを待っているカップルは、ヤンキー風でも理由(わけ)あり風でもない、全く普通のカップルだ。

 コンビニで買ったお菓子やらお酒やらを持って、みんな楽しそうである。ラブラブした空気が漂い、殺人事件なんか逆立ちしても起きないような雰囲気だった。

 ここで特記したいのは、時間である。私が初めてラブホテルを訪れたのは、午前中であった。利用ではなく取材目的だったので、空いている時間がいいだろうと思い、利用客がチェック・アウトし終わる時間を見計らって訪れたのだ。しかし、私がそこで目にしたのは満室の表示、そして行列を作って順番を待つカップルであった。

 朝からラブホテルに行ってどうするのか?

 デートの最終目的地としてカップルがたくさん訪れ、行列ができているのなら話はわかる。しかし、何でまた朝から……私の頭の中は朝から晩まで何度でも! というボディビルダーのような絶倫カップルのイメージが膨らんだ。

 

 しかし、目の前にいるカップルを見てもとても絶倫には見えない(ちょっと失礼かもしれないが)。

 この疑問は、後にラブホテルに行ったことがあるという学生を対象に行ったアンケート調査で解決する。

 

 その中の「ラブホテルに何をしに行きますか?」という質問に、「2人きりになるため」という回答がほとんどだったのである。「セックスをするため」と答えたのは、全体の3割に満たなかった。

 私が元々抱いていたラブホテルへの悪いイメージは、すべてがセックスに結びついていた。しかし、ここで現在のラブホテルの利用方法が、必ずしも=セックスではないことが明らかになったのである。 

 その大きな要因のひとつが、サービスタイムの導入ではないかと私は考える。サービスタイムとは、平均2時間の休憩料金で、長時間滞在できるという時間設定のことで、回転の少ない朝から夕方にかけて、適応されるラブホテル特有のシステムである(現在は、シティホテルもこれに習い、デイタイムの休憩サービスを取り入れ始めた)。長いところだと、12時間滞在できるホテルもあるくらいだ。

 現在、ラブホテルは激しいサービス合戦を繰り広げている。設備はどんどん豪華になり、カラオケやプロジェクター完備は、今やもう当たり前の時代である。食事や飲み物はウェルカムサービスという形で、無料で付いてくるホテルも多い。

 すると、食事に行ったり、カラオケに行ったり、映画に行ったり……と色んなところにデートに行くよりも、実はラブホテルの方が安く済むのである。しかも「2人だけのプライベート空間で」という特典付だ。それで、デートで朝から行くという若いカップルが、急増したということではないだろうか。

 ラブホテルは現在、「セックスをするための場所」ではなく「セックスもできる2人きりになれる場所」に変化したのである。

 私の研究生活は、そんなこんなで驚きの連続だ。次回は、現場で発見した様々なカップルの生態に触れたいと思う。お楽しみに!

[きむ・いっきょん] 1979年大阪府生まれ。神戸学院大学大学院人間文化学研究科博士後期課程在籍中。地域文化論専攻。『ラブホテル進化論』(文藝春秋社 文春新書)で注目を浴びる。

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