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「日本の底力は『おもしろければなんでもあり』にあり」

「日本の底力は『おもしろければなんでもあり』にあり」

http://business.nikkeibp.co.jp/article/person/20080416/153213/?ST=person

マーティ・フリードマン氏(元メガデス・ギタリスト)インタビュー【前編】

学生時代、はじめてのバイト代でコンポを買った。声に魅せられて岩崎宏美、アイドルだったら松本伊代、そのうち洋楽も聴き始め、ウォークマンで持ち歩き、クルマを買ったらカーステで…そんな自分だったのに、いつの頃からか、聴きたい音楽がすっかりなくなってしまった40代男性。それがわたくし。

 テレビの音楽番組でかかるのは、なんだか独りよがりの曲ばかりに聞こえるし、家族ができると、自分が好きな曲よりまずは子供の童謡だ。今、自分が聴きたい曲はどこに、いや、そもそもあるんだろうか。あるなら、どこで探せばいいんだろうか。


 「これじゃあ、音楽産業が元気ないのも無理ないな。そもそも『J-POP』なんて言い出した頃から、俺たち聴きたい曲がなくなってきたんだよ! ヘタウマとか、どこかの洋楽のパクリとか、自分の小さな幸せとか、なんだかそんな曲ばかりじゃないの?」…と、思っている方、私以外にもいらっしゃいませんか。

 ところが、そんな漠然とした思い込みに鉄槌を下す本を読んでしまった。筆者は「メガデス」というヘビーメタルバンドで全世界に1000万枚以上のセールスを記録したギタリスト、マーティ・フリードマン氏。彼は、J-POPの華原朋美、B'zの曲を来日時に聴いて衝撃を受け、バンド脱退後、日本に住み着いてしまったというのだ。

 恐ろしいのは、彼の視点にかかるとJ-POPの数々が「日本でしか生まれ得ない、ものすごく挑戦的な音楽」に見えてくることだ。だから、本で紹介されている曲を聴きたくなってくる(私は読み終えた直後に、iTMSで一気に24曲買ってしまいました)。彼は明治時代に日本美術を再評価するきっかけを作った、アーネスト・フェノロサのような存在、なのかもしれない。万事、悪い方に考えすぎて、自信喪失気味の日本だけど、マーティの目で見ると気分が変わってくる。ここはひとつ、「ニッポンのものづくり」を、そしてそれを支える人々を、素直に励ましてもらおうか。

(なお、マーティ氏の発言をできる限り忠実に再現するため、いくつかくだけた表現がございます。ご容赦下さい)

(聞き手、日経ビジネスオンライン 山中 浩之)


マーティ・フリードマン

1990年代、ヘビーメタルバンド、メガデスのメンバーとなりアルバムセールス1300万枚超えの世界的なスーパーバンドへと導いたギタリスト。その後、J-POPに興味を持ち、メガデスを脱退。活動の拠点を東京に移し、ミュージシャンやプロデューサーとして活動している。3月12日にはセルフカバーアルバム「Future Addict」を発売した。

同時に、日本の音楽や日本語の魅力について、外国人やミュージシャンならではの視点で様々なメディアにおいて語っている。

山中: 「音楽を聴かなくなったなぁ」と思ってから、ずいぶん経つんです。たぶんバンドブームの頃から、聴きたい曲が世の中に流れなくなったように思えて、結婚したら生活も変わって、音楽から離れてしまったんです。たまに耳に入ってくる曲があっても、「ちゃんと聴きたい」と思うきっかけがなかったんですね。ところがこの本を読むと、「え、J-POPって意外に音楽的にも奥が深いのか、なんだか面白そう」だなと、ものすごく久しぶりに、いま流れている曲を聴きたくなってきました。

マーティ: 普通、音楽にハマっている時期って、結婚する前のデートの時とか、ドライブに出掛けたりする時とかだよね。でも、結婚して子供が産まれて、ほとんど仕事と家で過ごすことになると、新曲を聴く環境じゃなくなる。

―― そうそう。新しい音楽を聴く場所やタイミングがなくなっちゃうんです。

マーティ: それはめちゃくちゃ「損」と思います。だって生活から音楽がなくなると悲しいでしょう。結婚して、ちゃんと仕事をやってることで、音楽を聴けなくなるのは避けたいと思いますね。でもね、音楽を探すのは自分の責任でしょう。ちょっと探せば、宝物をいっぱい見つけられますよ。

 それに、音楽と思い出はつながってるんです。結婚する前には楽しい思い出がたくさんあったでしょう。それって、その時に聴いた音楽とつながっているはず。

―― そうそう。それで、昔の曲ばかり聴いたりしている。

マーティ: でもそれは、逆に考えた方がいいんですよ。音楽は、これからの新しい思い出のBGMだって。家族や奥さんとの思い出と結びつける曲は、そのときに聴いていた曲なんです。だからぜひ、懐かしい曲じゃなくて、新しい曲を探して、楽しんで欲しいですね。

「パクリ」で影響を与え合う、それは音楽の基本です

―― ところが、我々の年代ぐらいになると、探す時にどうも思い込みがはいるんですよ。「J-POPは若い人向けで、つまらない」とか、「パクリだろ」とか、「洋楽のマネ」だとか……。

マーティ: 誰がそれを言いだしたのかは知らないけれど、それはバカな人だよね。どんな音楽でも、ミュージシャン同士、いろいろ影響しあってる。ビートルズだって、プレスリーから影響受けてるじゃん。プレスリーも、チャック・ベリーも、影響しあってるじゃん。

 どんなミュージシャンも、100%、誰かの影響を受けてるから、パクリとかそんなことは考えない方がいいんですよ。「その音楽が好きだから。好き」。誰かがパクったとか、パクリ=悪とか、もったいないよね、その考え方。だって僕、ビートルズは嫌いだけど、PUFFY大好き(笑)。

 そういうイメージは、すごく消えてほしい。だって、まったく同じように洋楽だってパクっているんだし。日本では元曲が分からないから、わからないのかな。それに……最近、アメリカのアーティストは日本のアーティストをパクってるよ。 ビジュアル系の影響が少しずつ入っているし、イメージだけじゃなくて、音楽のセンスもパクってる。僕の音楽だって、日本に住んでいる影響がいっぱい。みんな、お互いに影響あるんだから、そしてそれがいいんじゃない。

ジャンルがユルイから楽しい融合がいっぱい

―― この本の中で「えっ」と思ったのが、アメリカの音楽状況です。「ラップ、R&B、ロック、細かいジャンル分けがしっかりあって、そこから絶対に外れない」という話はすごく意外だったんですよ。あちらは音楽の先進国なのだから、いろいろ新しいことをやっていて、新しいジャンルや音楽がどんどん生まれているんだろう。そこからJ-POPはおいしいとこ取りをしてるんじゃ、ぐらいに思ってましたけど、そうではないんですか。

マーティ: アメリカでは確かにジャンルがしっかりしているんですが、結果的にその枠に縛られているんですよ。例えば向こうのヘビーメタルは、ほかのメタルバンドからはパクるけど、ラテン系の音楽からパクれない。ディスコミュージックからもパクれない。

 ところが日本では、ジャンル関係なしに好きだったらパクる(笑)。ほかのジャンルからパクっちゃダメ、みたいなルールがないから、結果的にはすごく冒険的に、面白いものが生まれてくる。たぶん失敗作も出るかもしれないけど、冒険する時って、そういうものでしょ。

 おかげで、メチャメチャ面白い、オリジナルな融合が生まれてくる。だから、日本でジャンル分けが強くないのは、とってもいいことだと思います。

―― 例えば、アメリカのヒットチャートって今どういう曲がランキングされるのですか。米国在住の友人が、流れてくるのはラップばっかり、とボヤいてましたが……。

「上手い」ことにこだわる「つまらなさ」

マーティ: つまらないです。流れてるのは、ラップと、メチャメチャ上手い系な女性ボーカルだけ、とかね。

 上手いことは上手んだけど、でも上手いだけ。超上手いなら、一般の人は満足するだろうけど、僕個人としてはつまらない。何か、面白いポイントが1つぐらいないとね。面白さというのは、説明するのはむずかしいんだけど、意外さとか新しさとか、何か、その曲について、友達と話ができるというか……。

 なんだかバタートーストみたいで、美味しいのは美味しいんだけど、そんなに驚くような味じゃないし、みんな、「次のセリーヌ・ディオンはアタシよ!」と狙ってる、みたいな感じ。

 だから僕は1回も、上手いだけの音楽を買ったことがない。みんな上手いのは、当然でしょう。だってお金を取って販売するプロなんだから。向こうの不思議な現象なんだけれども、すごく、「上手である」ことを褒める。上手な技とか、メロディーとか、そんなところばかりを褒める。

―― 上手ければ、売れるんですか。

マーティ: 売れる。例えばボーカルは音域が高ければ高いほど、声が強ければ強いほど、アドリブが長ければ長いほど。

 だけど、そんな遠吠えみたいなマネは、浜崎あゆみはしないよね。だけど、浜崎は次から次に良い曲、売れる曲を出してるじゃん。

 日本ではやっぱり、テクニックの上手さより、アーティストの個性や生まれつきの声。それ+(プラス)本人のイメージ。+いい曲、という組み合わせ。+ひょっとしたら話題性、+PVのカッコ良さ、とかね。日本の音楽にはジャンルに縛られない、上手さに縛られないから、いろんなプラスがあるんだよね。

 もちろん、ある程度は向こうでもそうなんだけど、でも日本の音楽の方がずっとカラフル。日本の音楽の方が想像力があり、日本の音楽の方がハッピーな時はハッピーで、悲しい時はより悲しい。個人的にはそんなカラフルなのが好みなんだ。

―― 「売り物なんだから上手くて当然」ということでいうと、J-POPの中には下手な人もいますよね。

マーティ: それって、「ヘタウマ」のことだね。でもね、ヘタウマと下手はまったく違う。単純に下手な人は、誰も買わないと思うよ。

ヘタウマは最強の「+魔法」なのだ

―― 実はこの本を読んで、ものすごくお聞きしたかったんですけど、「マーティが選ぶJ-POP極私的TOP40」というランキングがあって、華原朋美さんの曲が…ね。正直、彼女の曲を最初に聴いた時は「プレーヤーが壊れているのか」と思ったんですが(笑)。

マーティ: Perfumeの「ポリリズム」もそうですよ。間奏が、針が飛んでいるかと思った。個人的にはツボだけど、本当に冒険的で、普通の人ならCDプレーヤーがダメになったと思うよね(笑)。そういう曲は、1次元、深く聴かなきゃ楽しめない。でもその1次元さえ踏み込めば、すごく美味しい。

 という具合に、ヘタウマって深くてめちゃ難しいんですよ。だって朋ちゃんにしても、本当は普通に上手いよ。

―― 上手いんですか?

マーティ: 普通に上手いよ。だって僕、実はNHKで一緒に出演したことあるんですよ。実際、リハーサルの時は、普通に上手くって、ちょっとガッカリした(笑)。

 その時は、偶然かなと思ったんだけど、結局、完全に、普通に上手かった。……ということは、CDを作っている時に、本当に細かく小室哲哉さんやスタッフの人たちが、いろいろなテイクの中から、一番美味しいヘタウマを選んで、作り上げたんだと思う。だって普通に上手いだけなら、「なかなか良い曲だね」で終わっちゃうけれど、ああなるともう魔法でしょ。その魔法こそ、ヘタウマ。心の琴線を引っ張って住み着いてしまう、音楽にプラスできるスゴイ魔法なんだね。

 僕は、北出菜奈さんという歌手をプロデュースしているんです。あの子も普通に上手いんだけど、ヘタウマを理解している人なんだ。彼女の曲では、僕のベスト40にも入っている、「My treasure.」をレコーディングする時、僕らは彼女に、その曲をデモバージョンで歌ってもらいました。ざっくりと、ちょっと一発って感じで、音程とか何も考えずに歌ってもらったら、ヘタウマさがもう、ものすごくバッチリ。

―― 魔法が発動した。

人の美点を見いだせる人だけが、ヘタウマ魔法を使える

マーティ: だから、「ぜひこれを使いたい」と思ったんだけど、それを言ったらレコード会社の人たちは、ちょっとザワザワして(笑)「確認します」とか言い出した。最終的にはOKがでて、デモの美味しいヘタウマなボーカルを使った曲ができた。彼女のほかの曲は本当に完璧なんだけど、この「My treasure.」だけ、かなりヘタウマなエッセンスが入っている(Ruby Gloom名義、「サイレン」のカップリング曲)。

―― ヘタウマを、意図的に作り出してプラスすることはできるんでしょうか?

マーティ: たぶん良いプロデューサーがいればできると思う。でも下手だけじゃなくて、+(プラス)美味しい、個性的な声がないとダメ。だって普通の人って、みんな下手じゃん。説明ができない魔法の部分が必要なんだよ。でもそういう声を持つ人って、ひょっとしたらこの中(インタビュー陣を見回して)にも1人ぐらいはいるかもしれない。

―― つまり、「この人にこう歌わせたら魔法になる」、というのが分かる良いプロデューサーがいれば。

マーティ: そうです。ヘタウマは、そんな魔法の原石に、+(プラス)いろいろな人の中にある「良さ」を認められる、ヘタウマを理解してるプロデューサーがいないとダメ。原石があっても意味ナイじゃん。その魔法は、まず認められなければいけないんですよ。

―― しかも聴く側も、上手い下手という物差しだけで測っていたらダメなわけで。

マーティ: アメリカでは、ヘタウマというコンセプトは誰も理解できない。なぜかというと、日本人ほど深く音楽を聴かないから。

―― え、そうなんでしょうか?

日本人は深く音楽を聴いている

マーティ: 日本人は気がついてないけど、深く聴いてるマニアックな人が多いね。僕がこういった説明をすると、「ああ、なるほど」とか、「もう知ってたよ」とか、もっと細かいことを聞いてくるんです。

 だからミュージシャンもすごく勉強熱心。自分の音楽ジャンルにこだわらずに、いつも新しいプラスを探している。本にも書いたけれど、ロックのコード進行の中に平気でジャズが入ってくる。

―― 米国なら「『サンボマスター』みたいなノイジーでガレージな魂が入っているバンドの人たちは、絶対(ジャズで使われる)マイナーセブンコードなんて知らないはず(笑)」(P.99)なんですね。

マーティ: 日本ではバラエティー番組だって、たとえば「誰でもピカソ」という番組でも、すごく技術的にマニアックな音楽の話をやるけど、普通にゴールデンタイムで放送して普通の人が見てる。向こうでは100%あり得ない。

 僕はミュージシャンだから、その深いところがすごく楽しみなんだけど、日本ではミュージシャンじゃなくても、話が難しくても、頑張って理解して、より深く楽しめる。真面目だし、面白がり方がうまいんだよ。

 ヘタウマのことを理解できる人もいるし、それが理解できなくても、単純にかわいいと思って聴いててもいい。「ヘタウマ=かわいい」というのは、ジャンル、上手さに縛られない、「面白ければなんでもあり」の日本人しか理解できないと思います。

【後編に続く】







● サイン会案内

マーティ・フリードマン+SHELLY

トークショー&サイン会開催!

単行本発売を記念したイベント開催が決定。マーティ本人がJ-POP愛を熱く語るトークショーのほか、本を買っていただいた皆さんにはサイン&握手、さらにプレゼントまでつく豪華版です。さらに、トークショーのお相手として、伝説の深夜番組「Rock Fujiyama」で共演していた元気娘・SHELLYの参加も決定。是非、奮ってご参加ください!

【マーティ・フリードマン トークショー&サイン会】

4月23日(水)20時より

TSUTAYA TOKYO ROPPONGI(東京・六本木)にて

問い合わせは、電話03-5775-1515(TSUTAYA TOKYO ROPPONGI)

イベントの詳細はこちらをご覧ください

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