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「皆で渡れば・・・」――夕張の財政破綻では終わらない「集団的無責任
大阪の橋下知事が大阪再建のためにがんばっていますが、給料削減を反対している府職員は、こういう事例もあるということを知っておいてもらった方がいいかもしれません。
「皆で渡れば・・・」――夕張の財政破綻では終わらない「集団的無責任」
http://it.nikkei.co.jp/business/column/sou_tanto.aspx?n=MMITzv000023062006
私が最初に訪ねた日本の観光地は北海道の夕張市でした。中国から北海道大学に留学して、その時の専攻が鉱山だったため、まず日本の鉱山を見てみたかったのです。しかし、機械の騒音も炭鉱夫の煤っぽい顔もありませんでした。私が日本に来る前からすでに炭鉱跡は立派な博物館になっていました。
夕張はクリーンで静かな町でした。おいしい夕張メロン、国際的に知られる映画祭、素朴な土地柄。私は夕張が大好きでよくデートで行きました。夕張の思い出は夕張メロンのようにスイートです。
しかし、その夕張が財政破綻したのです。夕張市は先週、企業で言えば会社更生法にあたる財政再建団体の指定を申請すると表明しました。どれだけひどいかというと、「夕張さん」という年収400万円の人が、6000万円近い借金を抱えたようなものです。ゼロ金利政策の助けがなければ金利を払うだけで年収の半分は飛んでしまいます。
夕張さんは十数年前から既に今のような状況であることを知りながら、借金を重ねていました。そして何の心配もなく散財し続けました。夕張市周辺の道路は立派です。あまり集落のないところにも立派な道路を作りました。
私はそれをみたときに思いました。日本は素晴らしい国だ。世界中からお金を稼ぎ、お金が余っているからすみずみまで立派な道路が作れると。
博物館などがある石炭の歴史村=夕張市
しかし、夕張市には輸出企業もなければ炭鉱に代わって税収を担うほどの地場産業もありません。住民は減りましたが役所の人数や補助金はさほど変わりません。頼っているのは全部借金でした。
夕張市の住民も市役所の職員も、誰一人として借金をするのが好きな人はいないと思います。彼らは個人としては、収入に見合うような支出を行い、返せないような借金はしていないと思います。しかし、皆が集まってしまえば、借金はぜんぜん怖くないようです。
なぜなら、その借金は必ず誰かがいずれ返してくれると思っているからです。借金を返すお金を、市民からはとらない、市長からも議員からもとらないと知っているからです。その借金は間違いなく全国の人から集められて再分配される税金によって、返されると思っているからです。大阪府も神戸市もその他の自治体も皆が借金しているのに、こちらが借金しないと損をした気分になるのでしょう。
どうせ後で皆で「ツケ」を払うなら、どうせ皆で借金するなら、どうにもお手上げになるまでは無理して解決する必要もありません。コストを削ることも職員を減らすことも補助金を減額することも、どれもこれも不人気で反発を招きます。しかもやったからといって誰の得にもなりません。だから嫌われてまでやる人がいる方がおかしいのです。
これこそ夕張市の財政破綻までの心理的な道のりです。「赤信号、皆で渡れば怖くない」なのです。
子供に金銭を与え続けるといつまでも成人しません。三位一体改革などの議論もありますが、中央が地方の財政に資金を投入し続けると地方はいつになっても自立しません。最後は必ず全国民の税金で始末してもらえると思えば、慌ててコスト管理して、あえて近所の人々の反発を買うことはありません。
北海道の高速道路も夕張の農道も、東京湾アクアラインも構図は同じだと思います。政治家は地方に税金をばら撒くことで当選を狙い、住民は一票の権利を行使することで地元により多くの権益を要求します。
民主主義政治ですから、誰も非難しようがありませんが、知らないうちに日本は経済的には社会主義以上の中央集権国家になっています。「全ての道がローマに通ずる」ように全ての税金は中央に集まっていて、それを政治家と官僚の権力を行使する道具にしています。
本来、政治は触れたくないテーマなのですが、財政破綻を真剣に考える場合、個人と国家との関わり方は避けて通れません。外国人の私は日本の政治に口を挟みたくはないのですが、無機の分析手法としてお許しください。
日本は多くの点で国家社会主義の特徴をもっています。これは悪いか良いかの議論ではなく、事実です。民主主義だからといって社会主義にならないとは限りません。国民が国家を「お上」として受け入れたときから、政府は民主社会主義の要素を帯びます。国民が一党だけに政権を与え続ければ、政治は民主独裁の特徴を有します。
個人が国家に頼る以上、必ず集団的無責任が起きます。「赤信号でも皆でわたれば怖くない」は、「借金でも皆で借りれば怖くない」ことになり、「破綻しても国民全体で処理すれば何とかなる」ことになります。
私の思い出の地の夕張の財政は破綻しました。理由は収入の10倍の借金があるからです。国と地方を考えれば、日本全体ではそれよりもっと重い借金を抱えています。それでも真剣にならない官僚と政治家たち。彼らはきっと同じ本音を持っています。「皆で借りれば怖くない……」。
「夕張の皆さん、怖いことは何もありません。国の方がもっと借金しているから」。これが大好きな夕張の皆さんへの激励の言葉です。
[2006年6月26日]
限界自治夕張検証
女性記者が追った600日
著者: 読売新聞社 出版社: 梧桐書院 ページ数: 319p 発行年月: 2008年03月
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