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北京五輪 マラソン解説者・金哲彦氏を直撃! 野口みずきの連覇なるか? 注目選手のコンディション、レースの見所は?(前編)
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金哲彦のマラソン完走クリニック 速く長く走れるようになる!
北京五輪 マラソン解説者・金哲彦氏を直撃!
野口みずきの連覇なるか? 注目選手のコンディション、レースの見所は?(前編)
第29回目となる夏季オリンピックが8月8日、中国の北京を舞台にいよいよ開幕する。300名以上の選手で構成される日本選手団の中で、とりわけメダルが期待されるのが男女のマラソンだ。MoPiXでは、マラソン解説などのため、8月13日から北京入りする金哲彦氏に緊急インタビューを行い、選手のコンディションやレースの見所、メダルの可能性などをたっぷり伺った。
■『金哲彦 体幹ランニング特集』はコチラ
北京五輪マスコット「福娃(フーワ)」を前にする金哲彦(きん・てつひこ)氏。
<金哲彦(きん・てつひこ) プロフィール>
早稲田大学時代に箱根駅伝で活躍後、リクルートで小出義雄監督とともにコーチとして有森裕子を育て上げ、バルセロナ五輪で銀メダルに輝かせた実績を持つ。女子陸上での日本のメダル獲得は64年ぶりという快挙で、このメダルが今日の女子マラソン躍進の礎を築く。
現在は、カリスマコーチとして、トップランナーから市民ランナーまで幅広い層を指導し、厚い信望を集める。マラソン・駅伝中継の解説者としても20年のキャリアがあり、そのわかりやすさには定評がある。マラソン関連の著作も多く、2007年に刊行した『「体幹」ランニング』は増刷を重ね、ランナーのバイブルとなっている。
日本女子は、女王・野口、粘りの土佐、若さの中村の3人が世界に挑む!
——まずは、女子マラソンの注目選手の戦力分析をお願いします。日本の野口みずき選手(シスメックス)はいかがですか?
連覇が期待される野口みずき選手。
写真提供/共同通信社
金哲彦(以下、金) ディフェンディングチャンピオンの野口選手には、アテネ五輪に続いて、史上初の大会連覇が懸かっていますね。一度金メダルを獲ってしまうと、目標を見失ってモチベーションを維持できず、力を落としてしまう選手が少なくありません。そんな中で、彼女は2005年のベルリンマラソンで日本記録を更新しましたし、それ以降も進化しているように感じます。
強烈だったのは、昨年11月の東京国際女子マラソンですね。アップダウンが多く、とくに終盤の上りが非常にきつい難しいコースで、2時間21分37秒という大会新記録での優勝は、相当に高い力を持っていることを印象づけました。
これまで6回走ったマラソンでは、一度2位だった以外はすべて優勝。世界のライバルたちも野口選手をかなり警戒しているはずです。北京では野口選手中心のレースが展開されることでしょう。
——昨年の世界選手権の銅メダリスト・土佐礼子選手(三井住友海上)はどうでしょう?
金 土佐選手は、何といっても「粘り強さ」が持ち味です。優勝の経験はそれほど多くありませんが、必ず上位に入賞し、安定した結果を出す選手です。
普通、酷暑やきついコースだと、ランナーは気持ちが負けてしまいがちですが、土佐選手はどんな状況でも常に100%の力が発揮できるんです。一つ一つ積み上げてきた成功体験があるからでしょう。そういう平常心を保つ力はほかの選手よりも優れていると思います。
昨年の大阪世界選手権でもそうだったように、北京では苦しい局面を迎えても、最後まで決してあきらめない土佐選手の姿が見たいですね。
——オリンピック初出場となる中村友梨香選手(天満屋)はいかがですか?
金 21歳の中村選手は、これまで華々しい実績があったわけではないのですが、昨年の全日本実業団女子駅伝で一気に伸びてきました。初マラソンとなった今年3月の名古屋国際女子マラソンでいきなり優勝し、オリンピックの代表切符を手にしました。「シンデレラガール」と言っていいかもしれません。
所属する天満屋は、前々回、前回とオリンピックで入賞を果たした選手たちのいる名門チームなので、大舞台で戦うノウハウはしっかり持っています。フルマラソンの経験が2回という面は少し心配ですが、若い勢いというのは大事です。失敗を恐れることなく、北京の街を積極的に駆け抜けて欲しいですね。
このように見ていくと、日本女子は、将棋にたとえれば、王がいて、飛車と角が控えています。3人それぞれ持ち味があって、バランスのよい代表メンバーが揃ったと思います。
日本勢の前に立ちはだかる
ケニア、中国、世界記録保持者・ラドクリフ
——女子マラソンの海外勢では、どういった選手が日本のライバルになりそうですか?
金 キャサリン・ヌデレバ選手(ケニア)は手ごわいですね。前回のアテネ五輪では野口選手に負けて悔しい思いをしたでしょうし、今度こそ勝ちたいはずです。彼女は、暑さをそれほど苦にしませんし、マラソンの勝ち方を本当によく知っていて、レースの駆け引きが抜群にうまい選手です。日本勢にとってもっとも恐い存在と言っていいでしょう。
「野口選手の最大のライバルは、ケニアのヌデレバ選手でしょう」(金氏談)。
——ケニアやエチオピアといったアフリカ勢と並んで、開催国の中国勢はいかがですか?
金 中国は、何としてでも金メダルを獲りにいく意気込みで臨んでくると思います。中国の女子マラソン界は、元UFJ銀行陸上部監督で名桜大学教授の竹内伸也さんをコーチとして招き、ここ数年で急速に力を伸ばしてきました。
竹内コーチの指導のもと、昨年の世界陸上選手権で銀メダルを獲得した周春秀(シュウ・シュンシュウ)選手は、2時間20分台の自己ベストを持っていますから、野口選手に引けを取らない実力者と言えるでしょう。朱暁琳(シュ・ショウリン)選手と魏亜楠(ギ・アナン)選手も侮れません。
——世界記録保持者のポーラ・ラドクリフ選手(イギリス)はいかがですか?
金 前回のアテネで途中棄権したように暑いレースでの成功経験がありません。スピードは申し分ないのですが、出産を経た後のレースということもあり、よほど彼女自身のコンディションや気象条件が整わない限り、厳しいレースを強いられることになると思います。
レース終盤の5kmの直線がコースの見所!
碁盤の目のような街を走り抜ける北京五輪のマラソンコース。※地図はクリックすると大きくなります。
——男子の注目選手を伺う前に、今回のマラソンコースについて解説していただけますか?
金 天安門広場をスタートし、北京中心部を通って、ゴールとなる国家体育場を目指します。アップダウンの激しかった前回のアテネと違い、今回は高低差がわずか8mという平坦なコースです。街が碁盤の目のような造りになっていることもあって曲がり角が多く、それが終盤まで続きます。
また、中国の道路ならではの特徴と言えるのが、軍事転用を想定して、戦闘機や戦車が通れるほど路面がかたいのです。かたいと反発があってスピードは出しやすいのですが、逆に脚にかかるダメージが大きくなります。疲れやすくもなりますし、足にマメもできやすいです。普段どんなコースで練習しているかが、レース争いに影響するのではないでしょうか。
——コースの見所や勝負の分かれ目となりそうなポイントは、どこでしょうか?
金 私が地図で見た感じで密かに注目しているのは、35km手前からメインスタジアムへ向けて最後の角を曲がるまでの約5kmに及ぶ直線です。
本番では、すでにこの地点で選手たちはばらけて、先頭集団は2〜3人に絞られていると思います。この5kmは選手たちにとって、心理的にも、体力的にも、我慢を強いられる場面になるでしょう。
なぜなら、これだけ道幅の広い直線コースが延々と続くと、リズムを崩してしまう選手もいるため、逆転劇が起こる可能性が出てくるからです。25kmあたりから北京大学の構内など、道幅の狭いところを走ってきていますから疲労も溜まっているはずですし、この5kmはレースの勝敗を分ける、大きなポイントになると思います。
※後編では、男子マラソンの注目選手の戦力分析、日本勢のメダルの可能性、マラソン観戦がもっと楽しくなる見方などをお届けします。公開予定は8月5日(火)です。
(取材・文/小野哲史、企画・構成/薦伽すず、撮影/尾藤能暢)
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