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沈黙を破ったホリエモン,ITを語る
沈黙を破ったホリエモン,ITを語る
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/Interview/20080910/314505/
証券取引法違反の疑いで係争中の元ライブドア社長,堀江貴文氏は2008年9月8日,ITproとの単独取材に応じた。堀江氏は8月7日からサイバーエージェントが運営するブログ・サービス「Ameba」で個人ブログ「六本木で働いていた元社長のアメブロ」を開設。「思ったことを素直に書きます」と,最高裁判決を前に情報を発信していくことを宣言した。沈黙を破り,約1年半ぶりにメディアの対面取材に応じた堀江氏が,ITを語る。
(聞き手は,島田 昇=ITpro)
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これまでの沈黙から一転してブログを始めたのはなぜですか。
それは暇なのと,ストレス解消と,メディアに対するけん制ですね。継続中の裁判で一審と二審はあまり目立たないようにということで,2年くらい一方的にメディアに殴られている状況が続いていました。しかし,結局はこういう結果(一審,二審も実刑判決)です。だったら,悪い情報や間違った情報などが流れていたら,ブログできちんと反論していこうかなと。
理解されなかった「通信と放送の融合」
では,少し前の話から聞かせて下さい。2004年2月に「ライブドア」へ社名変更してから,「打倒ヤフー」を目指したポータル戦略としてメディア事業を展開。球団買収やテレビ局買収など,さまざな施策を計画し,失敗しました。どのように評価していますか。
結果としては失敗したので間違った選択だったと言えるのでしょう。でも,成功していれば正しい選択だったと思いますよ。
「世界一のポータルをやりたい」という話をしていたときに,テレビ局はどうしても必要でした。「ネットとテレビの融合というビジョンを明確に示していない」と批判を浴びましたが,僕のビジョンは非常に単純でした。テレビの画面にURLを流し続ける,ただそれだけでした。ネットにユーザーを集める純粋な広告媒体として,テレビ局が必要だったのです。
テレビ局を買収しなくても、CM出稿すればいいじゃないかという批判もありました。しかし、当時のテレビ局はURL等ネットに誘導するものを表示する時間をかなり制限していたし、そもそもスポットCMは既に費用対効果を考えれば割高で、売れ残りの枠もかなりあったはずです。それをテレビ局はいわゆる「番宣」という自社広告に使っています。この部分がテレビ局を買収すればタダでついてくるわけです。つまり、連結すれば、CMを出稿するのに比べ、営業費用を抑えることができると考えたわけです。
今もそうですが,メディアの主流はテレビからネットにシフトしつつあります。なぜかというと,テレビには双方向性がほとんどないからです。双方向性のあるコンテンツは「Mixi」の人気を見れば分かるように,第三者から見ても特に面白くない普通の人たち同士の会話の方が,有名人ばかりが出演しているテレビをだらだらと見ているよりも,面白いという人たちが増えているからです。逆にネットのそういう部分を知らない人たちが,仕方なくテレビを見ている。いや,彼ら彼女らは,「仕方なく」とも思っていないのかな。当たり前のようにそれを見ているだけです。
どう考えても,将来はテレビを見る時間がどんどん減っていって,それがネットに移っていくわけじゃないですか。だから,その流れを先取りしたネットを核とするメディア・グループを作りたいと考えていたわけです。世界的な複合メディア企業のNews Corporationが大手SNSのMySpaceを買収したことはその証左だし,実際にRupert Murdoch氏(News Corporation会長)と会見したときも同じように時代の流れを見て,そういう経営判断をしていました。
だからテレビそのものは,さほど興味はありませんでした。ただ,それを言い過ぎるとテレビ側の人たちが面白くないだろうと考えたので,それを声高には叫ばなかったのです。テレビを無意識に見ている人たちを,いかにネットの世界に連れてくるかが重要なことだと考えていました。
“iPhoneをやるため”にソニーを買収したかった
当時,ポータル戦略を成功させるにはテレビ局買収しか手立てがなく,行き詰ったのではないですか。
捕まる直前まで進めていたのは,ソニー買収計画です。「やることがなくなった」と話していた村上(世彰=解散した通称「村上ファンド」のファンドマネージャー)さんに話したら「面白いな」ということで。その時に僕が構想していたのが,今で言うところの「iPhone」を軸にした会社に変革させることです。
野球もテレビも結果的にはうまくいかなったわけですが,消費者をネットの世界に連れ込むために必要だった知名度の向上は果たせました。そこで次にチャレンジしようと考えていたのが,ソニーのブランドと技術力を活用して,いかにネット時代の流れに則した企業に変革させるかだったわけです。
ソニーが魅力的だったのは,音楽と映像のコンテンツを保有していること。それにオーディオ機器やモバイル,有機ELなどの技術。金融商品もあり,FeliCaの技術もある。逆にいらないと思っていたのは,大型テレビなどの家電製品で,中国の家電メーカーに売却するつもりでした。ゲーム機事業もいい時はいいが悪い時のリスクが大きいので,マイクロソフトに売却してしまえばいいと考えていました。
そうして経営資源の選択と集中をして,iPhoneのような事業を展開できれば,コンテンツ力はAppleより強いわけですし,それがソニーの原動力になると信じていました。
なぜ,iPhoneである必要性があったのですか。既存の携帯電話でもできそうです。
携帯電話機は,インターネットを閲覧するブラウザ端末としては使えないと思っていたからです。
これからのコンピューティングとネット閲覧を考えると,必ずそうなります。今やデスクトップPCはコンピュータ・グラフィックスや特殊演算などの専門分野でない限り不要です。通常のオフィスワークではノートPCで十分です。PCは急速に小型化の道をたどっています。こうした大局を見れば,PCは今よりもっと小さくなるし,すでにMixiの利用者の7割が携帯経由でしょう。
しかし,そんなことは後付けで何とでも言えますね。
そう言われたらしょうがない。ソニーの買収計画を練っていたこと自体が,それの証左だと言えると思いますが。
ソニー買収は実現性を持って進めていたのですか。
ソニーの当時の時価総額は4兆円くらいだった。ライブドアが2000数百億円弱の現金を持っていて,増資による自己調達で4000億円くらい,村上さんからも7000億~8000億円くらい出してもらい,合計で1兆数千億円のファンドを作る。さらに,LBO(レバレッジド・バイアウト)でソニーの資産を担保に資金を調達すれば,TOB(株式公開買い付け)により議決権ベースで50%超の株式は取得できるかなと。さらに,ソニーの取締役は半数以上が社外取締役なので合理的な反対理由がなければ,それは友好的TOBになったはずです。
フジテレビ買収の時は敵対的TOBしかなかったのですが,ソニーの場合はそうではないやり方ができると考えていました。そんなことを2005年11月ごろから考え,逮捕の直前まで具体的な策を練っていました。
ライブドアの技術力はGoogleに負けていない
あなたはネット企業の社長でしたが,「いかに資金を集めるか」「いかに知名度を上げるか」という施策ばかりが目立っていたと思います。その影響なのか,ライブドアは技術力がない企業だとも言われていました。
僕には「技術力がある」という意味がよく分からない。技術よりかは,アイデアと実装でしょう。では,あなたはGoogleが技術力のある会社だと言えますか。
技術力のある会社だと思います。
であれば,ライブドアも技術力のある会社でしたよ。技術力というものを評価する時に,僕はGoogleと当時のライブドアは大して変わらなかったと思います。では,Googleが世界一になれたポイントは何だと思いますか。
PageRankのロジックをベースとした検索エンジンを発明し,それを広告事業と結びつけることができたからだと思います。
そういう発想ではダメだと思うんです。
Googleが秀でていたのは,検索エンジンに対する考え方です。Googleというのは「インフラ屋」,あるいは「サーバー屋」なんですよ。つまり,いかに安くサーバー機を調達し,そのサーバーを大量に置けるデータセンターを構築できるかというところに注力したことです。広告ビジネスで重要なのは,いかに速く検索結果と広告を表示できるかというスピードです。僕はGoogleが成功した真の理由は,そこにあると思います。
当時,僕は検索エンジンというのは,どれだけ多くのクエリー要求に対して1台のサーバー機で処理できるかということばかりが重要だと考えていました。しかし,実際は1台のサーバーで最低限の同時接続をさばき,規模の拡大と共にサーバーの台数を増やしていった方が効率的だし,スピードも速いに決まっている。
では,それをやればよかったのではないですか。
自分でもなぜそれをやらなかったのかは今でも分からないのですが,おそらく,こだわりすぎていたんだと思います。自分がダメなプログラマであるというコンプレックスが邪魔をして。プログラマはサーバーを1台増やしたから速くなったというところではなく,自分のプログラムによって速くなったと言いたいところがあるんですよ。そうじゃないと,誰も誉めてくれませんし。Googleの思想はむしろ,プログラマとしてはスマートではないんです。
確かに,そんなプライドを捨てて,「インフラ屋」をやればよかったんだけれど,そこまで割り切ってGoogleのような思想にはなれなかった。
iPhoneをやるためのソニー買収計画と同じですが,逮捕されるまでの間に「インフラ屋」を目指そうとした形跡がないように思えますが。
それには買収の必要などはなかったですからね。技術力で当時のライブドアがGoogleに負けていたかと問われれば,正直な気持ちとして「そんなことはないよ」と言える。逆にGoogleは大した技術力があるとは思っていません。優秀なプログラマが大勢いる会社というよりも,泥臭い技術力の会社だと思います。まあ,こんなことを言っても「負け犬の遠吠えだ」と言われてしまうのがオチですが。
今のIT業界は,「技術屋」ではなく「コンテンツ屋」が活躍する時代
現在の国内IT業界については,どのように感じていますか。
IT業界でもうかっているのは今,外国為替証拠金取引(FX)くらいじゃないですか。例えば,プラネックスの稼ぎ頭は子会社のMJだし,サイバーエージェントもそう。やっているところは,みんなもうかっているという印象です。
収益モデルがきちんとしていて稼いでいるのは,世界的に見るとGoogleやAppleなど。国内で言えば,ヤフーやミクシィ,「モバゲー」を運営しているディー・エヌ・エーくらいでしょう。
IT業界の今後の大きな流れとしては,何に期待していますか。
AppleとGoogleで打ち止めかな。まだ出てくるかもしれませんが,すでにITは道具として普通に使われている感があって,Web構築みたいなところで言えば,「ブログかWikiがあればいいんじゃない」と思ってしまいます。
ただ,このままだとITの基盤はすべてGoogleやAmazonのようなクラウド・コンピューティングを提供する企業に奪われてしまう恐れがあります。
もうそうなっているから,しょうがないんじゃないんですか。何かまずいことでもありますか。
クラウド・コンピューティングの普及でIT業界の構造が大きく変わり,今までそこで稼いでいたプレーヤの売り上げが次々と海外勢に奪われていってしまう懸念があります。もしそうだとしたら,国内IT業界の市場規模が縮小する可能性も否定できません。
逆に「使ってやれ」というくらいでいいと思います。Google日本法人は日本に税金を納めているわけですし。
そこまで言うのなら,僕はやはりソニーみたいな日本の誇る大企業がもっと革命的なサービスを提供するべきだったと思いますよ。違う見方をすれば,例えばiPhoneの中の部品でも日本製のものが使われていたりとか,IT業界はすでにそんなすみ分けが出来上がり始めています。国とか地方とかそういうのが関係なくなるのが,インターネットの本質でしょう。
ITにはもう興味がないんですか。
少なくとも,新しいサービスが次々と出てくるような,当時の熱狂的な楽しさはほとんど感じられないですよね。今は「技術屋」の出番じゃないでしょう。コンテンツやサービスを考える人が活躍する時代ではあるけれど。それだと僕の持ち味を生かせないんですよ。もっと下位レイヤーも含めた事業でないと。
当時は,ITで大きいプレーヤになれる可能性があったから,やっていたわけです。今はそれがないですから。
わたしは,あなたの強みは技術屋というよりも,普通だったらみんなが手を触れないようなところでも,そこが本質であると判断したら,あらゆる手段を使ってその本質を突く実行力にあると思います。
自分ではそういう意識はないですね。やはり技術絡みの案件でないと。もちろん,そういう大局は見ていますよ。でも,今の僕がやるべきことではないと思います。FXの会社を作って1億~2億円もうけても,それで忙しくなって自分の時間がなくなったら意味がないですし。
それはあなたが膨大な富を持っているからでしょう。
また同じことをやっても,やっている側にとっては面白くないものです。会社組織を作ってうんぬんというのは,一通りやった感じですね。それで捕まって,さまざまなものを見てきました。正直,「そういうのは,もういいや」というのが率直なところです。
僕が作ったライブドアは,虚業ではなかった
後悔していますか。
後悔をしようとしたことはあるけれど,結局できませんでした。いろいろ考えてみたけれど,どっちかと言うと良かったかなと。もっとうまい方法はあったのだろうけれど,やれることはやったのでね。
何をやれましたか。結局,ライブドアでの実績は何だったのですか。
自分の人生にとってできたということです。結果はどうあれ,いい経験になったし,やっていたときは楽しかった。
今は楽しくないのですか。
これから楽しくなればいいなと。ただ言えるのは,僕はリスクのあることは十分やったので,今後はほかの人にやってもらいたいですね。
ブログではITのほかにも脳科学や遺伝子工学の最新技術を併せて語っている『超人類へ!』などに興味を示していますよね。
今は「脳にチップを埋め込んで…」みたいな話の方が面白いですね。そういう興味があることにちょこちょこ手を出して,それを地味にやって何年後かに成果が出るといいかなと。
最後に,当時のライブドアの株主に対して何か言うことがあれば。
長期の株主の方々の中にはもうかった方もいると思います。一方,最後の1年くらいに株主になった方々の中には大損してしまった方もいるようです。僕は最大限の努力はしたのですが,本当に残念な結果になってしまったと思っています。ただ,あそこまで激しく叩かれるとは,思ってもいませんでしたが。
世間からは「虚業だ!虚業だ!」と叩かれ,僕が逮捕されたとき,みんながみんなライブドアは潰れると思っていたでしょう。でも僕は,絶対に潰れないと確信を持っていた。一時的に売り上げは落ちるけれど,借り入れもないし,単なる叩かれすぎの風評被害だったわけです。僕が作ったライブドアは,虚業ではない,きちんとした経営基盤を持った会社でしたから。
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