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自意識過剰ゆえの悩み(松任谷正隆さん)
自意識過剰ゆえの悩み(松任谷正隆さん)
http://doraku.asahi.com/info/doraku/entertainment.html?ref=navi
最近、人に会うたびに「レストランに一人で入れるか?」を聞く。特に女子には聞く。僕のリサーチによると、女子の半分以上はひとりで入れると答えるし、残りの半分は、たいして好きでもない男子でも誘って一緒に入る、という驚くべき結果が出た。男子諸君、君たちは食事に誘われたからと言って誤解してはいかん。しかたなし、なんだと……。一方、男子の答えはどうかと言えば、これはもう腹が減ってやむなく入る、と答える人間が圧倒的。このレストランがおいしそうだ、なんて情報誌片手に入る男子は意外や意外、一握りであった。
さて、なぜこんなことを聞いて回るかと言えば、ええい、カミングアウトしてしまおう。なんと僕は一人ではレストランに入れない。どこかに入るくらいならドライブスルーのハンバーガーでいいのである。
なぜこんな人間になってしまったのか。これを話し始めると一昼夜かかりそうだから省略するとして、一番のポイントは自意識過剰、というところではないかと推察している。自分でもよくわからないところが怖い。それでは多くの女子たちのように好きでもない女子を誘って……というのはもっとだめかもしれない。好きでもない女子と一緒だとご飯がまずくなるだろう……失礼。
では、好きな女子と一緒ならいいのか、と言われると、ここが問題なのだが、今度は自意識の壁が立ちはだかって、ご飯がのどを通らない。「ばからしい、どうでもしろよ」という声が聞こえてきそうだが、高校生の頃、本当に好きな女子と一緒にレストランに入って、まったく何ものどを通らずに一人で冷や汗をかいて恋愛を終了させた僕にとって、一緒にご飯を食べる、というのは一晩を共にする、のより難しい。これは本当だ。
話がどんどんそれていってしまったので修正をするが、とにかく、僕はこいつを何とかしよう、と思いついた。こいつ、とは、好きな女子を作って一緒にご飯を食べてみよう……というのではなく、一人でレストランに入ってみよう、というのである。もし、仮に入れるようになったとしたら僕の人生観は大きく変わるかもしれない。というよりも、これまでの人生はいったい何だったのか、と後悔をするかもしれない。
僕の半生は、思い出すにつけ、何かのコンプレックスを逆にねじ伏せるモチベーションによって成り立っていたことに気づく。これは現在やっている仕事もみんなそうだ。面白いもので、嫌いなものが好きになると、これはもうどうしようもないほど好きになってしまったりする。
というわけで、笑わないで欲しいが、まずは近くのレストランに一人で入る姿を想像する、つまり、イメージトレーニングに励む毎日なのである。
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