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"語りたがり"で何が悪い? 矮小化する「アイドル評論」の今(前編)
"語りたがり"で何が悪い? 矮小化する「アイドル評論」の今(前編)
http://www.cyzo.com/2009/05/post_1933.html

『アイドルにっぽん』巻末に掲載されている宮沢りえ(左)、後藤久美子(右)、そして中森の3人。
アイドル同様、時代とともに移り変わっていくアイドル評論の世界は、00年代後半、Perfumeや初音ミクといった新しいタイプのアイドル出現によって、その模様を大きく変えつつあるという――。そこで、70年代から現在までのアイドル評論の変遷を辿った。
アイドルの起源について、コラムニストの中森明夫は、自身の25年分のアイドル論考をまとめた著書『アイドルにっぽん』(新潮社/07年)の中で、南沙織を「国産アイドル第一号」としている。南沙織がデビュー曲「17才」をリリースしたのは、1971年6月。南は、同年4月にデビューした小柳ルミ子、10月にデビューした天地真理とともに「三人娘」と呼ばれた。73年には、オーディション番組『スター誕生!』(71年~83年/日本テレビ)からデビューした森昌子、桜田淳子、山口百恵が「中三トリオ」と呼ばれ人気を博す。70年代は、歌の巧拙や外見的な価値そのものよりも、存在自体が大衆から愛されるタレントという意味でのアイドルが誕生した時代だった。
では、アイドルを語るアイドル評論は、どのように成立したのだろうか?アイドルソングの評論を主とするミニコミ誌「よい子の歌謡曲」のメンバーによって編集された『80'sアイドル ライナーノーツ』(JICC出版局/91年)の中に、「80年代はまぎれもなく、アイドルの時代だった」とある。この言葉を受けて中森は、「80年代は『アイドルの時代』であると同時に『アイドル論の時代』でもあった」(『アイドルにっぽん』)と続けている。
アイドル評論ブームの先駆けとなった評論家・平岡正明の著書『山口百恵は菩薩である』が講談社から出版されたのは79年。「よい子の歌謡曲」が創刊されたのも79年で休刊が91年。89年には小倉知加子著『松田聖子論』(飛鳥新社)、稲増龍夫著『アイドル工学』(筑摩書房)なども出版されている。
当時のアイドル評論の主流は、アイドルを「時代を映す鏡」として解釈するという切り口だ。すなわち、大衆心理が投影されたアイドルを素材に時代性や社会を語るというものだ。『アイドル工学』の中に見られる「『百恵』対『聖子』から時代を読む」といった見立てが、典型と言ってよい。中森は、91年に「週刊SPA!」(扶桑社)に発表した「ピンク・レディーの80年代論」の中で、「80年代を過ぎた今では、アイドル論的視点は普遍化したように見える」と語っている。つまり、70年代に生まれたアイドルが、80年代に全盛期を迎えると時を同じくして、アイドル評論も評論としての社会的地位を確立したと言える。
時のアイドルと共に評論の中身も変化
『アイドルにっぽん』の巻末には16歳の宮沢りえ、15歳の後藤久美子と並んで写る中森の写真がある。撮影されたのは89年4月。この写真が象徴するのは、70~80念代のアイドルが、「アイドル歌手」だったのに対して、90年代に入ると、その本流が「CM美少女」になったことだ。80年代アイドル歌手の全盛期を支えた『ザ・ベストテン』(TBS)の放送が78年から89年までで、牧瀬里穂、宮沢りえ、観月ありさの「3M」がブレイクしたのが90年代初頭であることからも、90年前後を境に流れが明確に変化したのがわかる。と同時に、評論の質も変容していく。
アイドル歌手には歌番組やオリコンチャートというランキング(評価軸)があったが、CM美少女には指標がない。そこで注目されたのが、アイドル評論家・北川昌弘が、コンテスト受賞歴やCM出演本数などのデータ(と北川の独断と偏見)に基づいてアイドルをランク化した「T. P. ランキング」だ。北川はそれまで社会学的な切り口が主流だったアイドル評論の世界に、"データをベースにして、アイドルを鑑定する"という新たな視点を持ち込んだ。つまり、アイドルへの目線が、売れている(大衆の支持)かどうかが評価の第一義ではなくなり、より多様な評価軸が持ち込まれるようになったのが、この時代なのだ。
00年代になると、CM美少女から続くアイドルの流れは、グラビアアイドルやアイドル女優へと移っていく。だが00年代中盤になって「グラビアン魂」(「週刊SPA!」/リリー・フランキー×みうらじゅん)のようなグラビアアイドル評論も出てきたものの、中森が「皆さん、"少女映画"や"アイドル女優"の状況をもっと面白くしましょう!」(『アイドルにっぽん』)と語るように、「アイドル歌手→CM美少女→アイドル女優」という、本流に沿ったアイドルへの評論はいまいち盛り上がりに欠けている。
なぜこれらのアイドルに対する評論は盛り上がりに欠けてしまったのか?それを理解するためには、一度時計の針を80年代半ばまで戻す必要がある。
(後編に続く/文=岡田 康宏/サイゾー5月号より)
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